個人事業主の節税で大切なのは2つ。これだけやれば税金で損をしない!
個人事業主の方は確定申告の提出期限から1ヶ月経ちました。確定申告の慌ただしさも無くなってきましたが、節税を考えるなら早めに動かないといけません。
確定申告のときに慌てないように今から節税を考えていきましょう。
個人事業主の節税で大切なのは2つです。
この2つをきっちりやれば税金で大きな損はしないはずです。
個人事業主とは
この記事を読んでいただいている方は「個人事業主」関連の検索でお越しいただいていると思いますが、個人事業主とは何でしょうか?
個人事業主とは、株式会社などではなく個人で事業をすることをいいます。自営業ともいいますね。
個人で事業をやっているかたは「個人事業主」となります。
事業所得になると個人事業主
次に問題となるのが、「事業」かどうかということ。個人事業主の所得は事業所得となります。会社員は給与所得、不動産貸付があったら不動産所得。
「事業」となると事業所得として個人事業主となります。事業とならない場合は雑所得として確定申告をすることになります。
税金上は事業所得の方が有利です!
こちらに詳しく書いています。
ネットでちょっと収入があったらそれを事業といえるのか?
オークションで売っていたら事業?
せどりは事業となるの?
実は「事業」となるかどうかの判定はあいまいで、はっきりとした基準がありません。
目安的なものはあります。
- 相当期間の継続して収入があるか
- 相当な時間・労力をかけているか
- 営利性があるか(儲かる可能性があるか)
などなど。
非常にあいまいなので個別判断するしかなく難しいケースが多いのです。
開業届を出したら個人事業主?
個人事業を開業したら開業届出書を税務署に提出する必要があります。
この開業届出書を提出したら個人事業主となるわけではありません!
開業届出書はあくまで税務署に開業したことを知らせるためだけのものです。
個人事業を開始したけど届出書を提出していないケースもあります。(本来はダメ)
開業届出書を提出したかどうかは事業所得となるかどうか、個人事業主となるかどうかは関係ないのです。
あくまで実質で判定することになります!
個人事業主の節税の前に大切な2つのこと
個人事業主の節税を考える前に、大切なことが2つあります。
それは、
- お金を残すことが第一だということ
- いくら利益がでているのか把握すること
節税の前にこれらを意識しておきましょう。
節税の目的はお金を残すこと
税金を減らすことが目的になってしまって、結局お金が残らない、ということもあり得ます。
お金が減ってしまうくらいなら節税をしないという選択もあるのです。
ここをしっかりと意識しておきましょう。
個人事業主になったらまず基本的なことをしっかりとやっておく必要があります。
→ 節税の前にやるべき3つの基本。保管・帳簿作成・期限内申告
今の利益を把握する
個人事業主の節税、というキーワードで検索してきていただいた方に質問です。
今、利益がいくらでてるか把握していますか?
この記事を書いた今は4月ですから3月までの3ヶ月分の数字はわかるはずです。
単純に4倍すればおおよその利益がわかりますよね。
節税の前にどれくらい利益がでるのか、を把握しておきましょう!
もちろん単純に4倍した数字が利益になるはずありません。
ですが、大まかにでもどれくらいの利益が出そうなのかがわからないとどれくらい節税をするべきなのかもわかりません。
節税策をやりすぎて赤字、逆にお金が減ってしまったなんてことにもなりかねません。
何も会計処理をしていない人は
今からでも税理士にお願いしましょう。
確定申告の時期になってからでは節税できるものも限られます。
今から手を打てば節税できるものも直前だとできなくなりますよ。
今はfreeeのようなクラウド会計もありますから自分でやってみるのもいいでしょう。
最近はMFクラウドを使っている人も多いですね。
どちらも機能的にはそんなに変わりません。(個人的にはMFクラウドが好き)
下記より登録できます。
最初は無料で使用できますのでまずはお試しで使ってみるのもいいでしょう。
個人事業主の税金は?
個人事業主の節税を考える前に、そもそも個人事業主にはどのような税金があるのかを知っておきましょう。
主には、
- 所得税
- 住民税
- 事業税
- 消費税
この4つです。
個人事業主の節税を考えるのは、所得税です。
所得税が安くなると住民税や事業税も安くなっているはずです。
個人事業主の節税は基本となる所得税の節税を考えることとなります。
個人事業主の節税で大切なのは2つ
個人事業主の節税を考えたときに大切なのは2つです。
- 青色申告をする
- 経費をもれなく入れる
これだけです。
よく言われることですが、やっていないケースが非常に多いです。
この2つをきっちりやるだけで意外と節税になるのです。
この2つをやったら、
- 国民年金基金
- 小規模企業共済
- 経営セーフティ共済
- iDeCo(確定拠出年金)
- 法人化
などを考えていくことになります。
所得税の計算
所得税の税額は所得金額が大きければ大きいほど所得税も増えます。
基本的な計算方法は、
- 収入ー経費=所得金額
- (所得金額ー所得控除)×税率=所得税額
- 所得税額ー税額控除額=納税する金額
となります。
まず1.の【収入ー経費=所得金額】が大切です。
ここで計算した所得金額は利益と考えてもいいです。
この利益を下げることができれば所得税も節税できます。
経費のもれが非常に多い!
大切なのは経費。
個人事業主でありがちなのは経費にできるものを入れていないケースがあります。
本当にもったいないのですが、非常に多いです。
節税を考えたらまずやるべきなのは、経費をもれなく入れることです。
節税の基本は青色申告
白色申告のメリットはない
まだ青色申告をやっていない人は早めに青色申告にしましょう!
青色申告は帳簿をつけないといけないから面倒、と思っている人も多いようですが、今は白色申告でも帳簿をつける義務があります!
なので個人事業をやっている限りは帳簿をつける必要があるのです。
白色申告のメリットはありませんよ。
青色申告は届出書を提出するだけ
青色申告をするには税務署に届出書を提出するだけです。
注意点は、
- 事前に届出が必要
- 全部で4種類の届出をしておいた方がいい
ということです。
事前に届出が必要
青色申告は事前に届出が必要です。
令和4年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出すれば令和4年分から青色申告をすることができます。
令和4年から青色申告にしたければ令和4年の3月15日が提出期限となります。
全部で4種類の届出を
青色申告の届出をするときには、4種類の届出書を提出しましょう。
- 「青色申告承認申請書」
- 「給与支払事務所等の開設届出書」
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」
- 「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」
この4つです。
この届出書を提出しておけば、家族に給与を支払うことができるようになります。
これは青色申告の非常に大きなメリットです。
青色申告のメリット
- 家族に給与を払って経費にして節税できる
- 会計ソフトで経理をしていれば65万円の控除ができ節税に
- 売掛金の貸倒に備えて引当金という経費計上して節税
- 赤字を繰り越すことができるので節税になる
- 30万円未満の備品などを一括で経費にして節税
メリットはこんなところ。
65万円控除で節税
大きいのは、65万円の控除でしょうね。
会計ソフトで経理をすればいいだけです。
お金を使わなくても65万円経費にできるのです。
自分で経理ができなければ税理士に頼んでもいいでしょう。
報酬はかかりますが、65万円控除できるのは大きいです。
個人事業主で節税したいなら青色申告は必須です。
65万円控除についてはこちらに詳しく書きました。
→ 青色申告の65万円控除の要件は?いくら税金が安くなるの?
※その後の改正によりe-taxで提出するなどの要件が必要となりました。
専従者給与を支払って節税
個人事業主として家族に給与を支払うことができるのも大きい。
注意点は専従ということです。他に仕事をしていてはダメです。
あとは、極端に高い給与もダメです。
普通に従業員を雇ったとしたときに支払う給与と同じくらいにする必要があります。
奥さんに給与を払えるのは大きいですね。所得分散になりますから。
一人で1,000万円の収入より、二人で500万円ずつの方が税金は安いです。
貸倒引当金で節税
青色申告だと貸倒引当金というものを経費にできます。
売掛金が貸倒たときのために引き当てをしておくものです。
一般の事業なら売掛金の5.5%を経費にできます。
500万円の売掛金があったら275,000円が経費にできるのです。
大きいですね!
青色申告なのにやっていない方が多いのでチェックしてみましょう。
赤字を繰り越して節税
青色申告だと赤字を繰り越すことが出来ます。
去年100万円の赤字で、今年が100万円の黒字なら相殺して税金は0になるので節税になります。
白色申告だと赤字を繰り越せませんので、今年100万円の利益がでたらその分の税金を支払わないといけないのです。
注意点は、繰り越せるのは3年間だということです。
個人事業主は経費をもれなく入れて節税する
節税のためには経費をもれなく入れることも大切です。
ここで大切なのは、新たにお金を払って経費を作るのではなくすでに支払っているもので経費になるものを入れるということです。
冒頭に述べたように、節税のためにお金がなくなっては意味ありません。
すでに支払っているもので経費になるものを入れるのです。
経費としてもれているものとして、
・自宅家賃・・・個人事業として使っている部分があれば一部経費にできる
・自宅光熱費・・・個人事業として使っていれば一部経費にできる
・車の経費・・・個人事業として使っていればガソリン・保険・駐車場など一部経費にできる
・インターネットの費用・・・個人事業として使っていれば一部経費にできる
といったところ。
すべて事業として使っていれば、という要件があります。
個人事業として使っているのであれば、自宅の家賃でも光熱費でも経費にできます。
もちろん、全部は無理ですが合理的に按分して一部を経費にできますよ。
経費についてはこちらの記事も参考に。
個人事業で利益が出ているなら法人成りで節税も
個人事業主で利益がでているなら、法人成りも考えましょう。
法人の方が保険などのように経費にできるものが多いので節税しやすいです。
自分に役員報酬として給与を支払うことも可能です。
一般的に売上が1,000万円くらいになったら法人なりした方がいいと言われます。
もし、これくらい売上があるようなら法人になることも考えてみましょう。
社会保険に強制加入というデメリットもありますし、一度設立したらやめるときも登記が必要で結構大変。
お金が出ていく節税
節税はお金を残すことが目的です。
なので無理にお金を払って節税をするのは意味がありません。
ですが、お金が出て行くものでも有効な節税があります。
- 倒産防止共済(経営セーフティ共済)
- 小規模企業共済
- 確定拠出年金
これらはお金が出て行きますが節税としては有効です。
倒産防止共済(経営セーフティ共済)で節税
これは取引先が倒産したときに、連鎖倒産しないための制度です。
一定額の支払いをしておくと取引先が倒産したときに借入ができます。
掛金は月額5,000円から20万円の範囲です。
良いのはこの掛金が全額経費にできるということです。
しかも、40ヶ月以上掛金を払っていると全額戻ってくるのです!
一時的にお金がでていきますが、100%戻ってきます。
注意点は、戻ってきたときに収入になってしまうということです。
戻ってきたときには税金が増える可能性があります。
赤字になりそうなときに解約できればベストです。
小規模企業共済で節税
これは個人事業主の退職金のようなものです。
こちらも毎月掛金を支払うことが必要です。
毎月1,000円から7万円までの範囲で選ぶことができます。
これは経費ではなく所得控除というものになります。
この制度も意外と知らない人が多いです。個人事業で利益が出ているなら必須です!
税理士が教えてくれなかった、という人も。
こちらに詳しい記事を書きました。
確定拠出年金で節税
こちらも所得控除となります。
節税にはなるのですが、加入は慎重にならないといけません。理由は解約ができない、からです。
基本的に65歳までは引き出しができません。
月額68,000円まで掛金をかけることが可能ですが加入は慎重に行いましょう。
制度としてはもの凄くいいものです。
支払ったときには所得控除、受け取るときには公的年金等控除や退職所得控除が受けられます。
しかも、運用益は非課税。
ものすごくお得なのですが、引き出しができないのがデメリットです。
小規模企業共済も加入してさらに節税を考えるなら加入するのもありです。
個人事業主でここまで加入していれば節税は大丈夫でしょう!
これ以上の節税となると法人化を考えたほうがいいです。
個人事業主の節税のまとめ
長々と書いてきましたが、個人事業主の節税で大切なのは冒頭に書いた2つ。
青色申告することとと経費をもれなく入れる、ということです。
これだけをきっちりやっておけば、税金で損したということにはそうそうならないでしょう。
個人事業主は日々の経理も大切です。
今どれくらい利益がでているのか、を把握しておかないとどれくらい節税するべきなのか、がわかりません。
そもそも節税するべきなのか、ということもありえますからね。
こちらの記事もおススメです!
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