個人事業主の税務調査で帳簿や資料を預かりたいと言われたときの対処法
個人事業者の税務調査では帳簿などをチェックされます。
ときには、これらの帳簿を税務署に持って帰って確認したいので預からせて欲しいと言われることがあります。
資料を預からせて欲しいと言われたときにはどのように対処すべきでしょうか?
この記事の内容について簡単にお話ししました。
税務調査は当日には終わらない
税務調査は事業規模によりますがたいていは1日から3日間くらいで行われます。 帳簿などを確認するのですが、基本的にはその日で終わることはありません。
税務署が来て帳簿を確認するのに1日から3日間ではとても終わらないのです。 資料に不備があったり、紛失していたりした場合もその日では終わりません。
宿題が出る
その日だけで調べきれるものではないので、宿題を出されることがあります。 これは特別なことではありません。
取引の内容や無かった書類などを用意して、後日に税務署に連絡・持参することになります。 たいていは何かしら宿題が出されます。
税務署は資料を預かることができる
税務調査を受けていると「資料を預からせていただきたい」と言われることがあります。
上述したようにその日だけで調べきれないことが多いので税務署に持ち帰って詳しく調べたいのです。
資料を持ち帰ること自体は認められています。 「預かり証」を発行してもらえば資料を預けることができます。
特別な理由がないのに断ると罰則があったりします。
税務署のQ&Aには罰則があることを理由に強制的にはやらない、と書いてありますが、断るのは難しいです。
資料を預かりたいと言われたときの対処法
今まで税務調査を受けた中で何件かは資料を預かりたいと言われたことがあります。実際に預けたときもあれば断ったこともあります。 「資料を預かりたい」と言われたときにどう対処すべきか書いてみます。
預けないこともできる
資料を預けないこともできます。
資料を持ち帰られてしまうと細かいところまでチェックされる可能性があります。
細かく見られたって何にも問題がなければいいのですが、自分が気づいていないところを指摘される可能性もありますのでそれを心配される方もいます。
ただ、今までの経験からすると資料を預けたとしても不利になってしまうことは少ないです。 調査をスムーズに進めるため、早期に終了させるためにも預けることも検討した方がよいでしょう。
断る理由
資料を預けることを断ったこともあります。正当な理由がないのに断ると罰則があります。 どうやって断るかが問題となるのですが、実際に断ったときの理由を挙げてみます。
- 紛失されたら困る
- 会計処理に困る
- 見返したいときに困る
- 調査のために時間をとっているのだからこの場で調べて欲しい
このような理由を伝えて断ったことがあります。
紛失が恐い
税務署は「資料を預かると耐火金庫に資料を入れているので仮に税務署が家事になったとしても資料は無事です」と言ってきます。
確かに税務署まで無事に持ち帰ってくれれば紛失の可能性は減りますが、問題は税務署まで持ち帰るまでの過程です。
税務署も経費削減しているので、資料を持ち帰るときのバッグなどは調査官が自前で用意しているのです!
お店の紙袋だったりヒドイときにはビニール袋だったりします。 ビニール袋で持ち帰られたら大変ですよね。透けているので中身が見えますし。
もちろん、しっかりとしたバッグを用意している調査官もいますがビニール袋で持ち帰ろうとするケースも実際にあるのです。
税務署に資料を持ち帰った後も紛失のリスクはあります。
資料を預けるときに領収書を何枚預けたか、なんてわかりませんよね。
1,000枚くらい預けて数枚無くなっていたとしても気づきません。で、たまたまその紛失したものについて「領収書がないのでダメです」とか言われたら大変です。
紛失のリスクは絶対にありますのでこれを理由に断ったことがあります。
見返すので困る
断る理由として、見返したいときに困ると言ったこともあります。 領収書や請求書、契約書などを見返したいときに困るから預けたくないと伝えました。
会計処理をする際や取引先から問い合わせなどがあったときに資料を見ることがあるので預かるのはやめてくれ、と伝えて預けるのを断りました。
ただ、最近はこのような理由を言っても応じてくれなくなっています。
税務署が預かるのは過去の資料なので見返すことが少ない、元帳などはデータで残っている、預かっても必要があれば返却することもできる、ということで断れないことが多いです。
調査のために時間をとっている
今のところ一番効果があるのがこの理由。
税務調査のためにわざわざ時間をとっているのだからこの場で調べてくれ、と言うのです。
疑問点があったら今聞いてください、とも伝えます。 税務調査のために仕事の予定などを調整して、わざわざ時間を作っているのですからその場で調べてもらうように伝えます。
税務署は調査に来る前にどれくらい資料があるかはある程度分かっているはずです。
事業規模や事業内容からどれくらいの資料があるかは事前に分かっているはずです。
調査にどれくらい時間がかかるのかを見越した上で調査日の連絡をするのですから時間がかかると思えば2日間や3日間といってくるはずです。
それを、時間内に全て見ることができないから預かりたいと言うのはおかしな話です。
時間が足りないと言うのは調査官の見積もりが甘かったわけですから、それを理由に資料を預けることはありません。
資料を預けることも
資料は場合によっては預けてもいいことがあります。
資料を預けた方が税務調査が早く終わる場合もあります。
資料を持ち帰って集中的にやってもらうことで効率的に調査が進みます。
何より、税務署の調査官が事務所や自宅に長時間居座るのも嫌ですよね。 一度来たわけですからあとは電話連絡などで済みます。税理士に立ち会いを依頼していればあとは税理士がやりとりしてくれます。
とにかく早く帰って欲しい場合などには預けてしまうのも手です。
調査官も上司に報告が必要
税務調査に来る調査官は自分で調査を終わらせる権限がありません。
税務署の調査官は調査した内容を上司に報告して、その上司がどうするのかを判断するのです!
税務署の調査官がコピーを取ったり資料を預かったりするのは上司を納得させるためです。
追加の税金が出るときも「どうして追加の税金が出るのか」、何も問題がないときも「どうして問題がないのか」を上司に納得させないといけないのです。
そのために資料を提示したいので預かるのです。 税務調査を終わらせるか継続するかは上司が決めているのです。
調査官の説明が足りなかったりすると上司から「もっとよく調べて来い!」と言われてしまうのです。
調査官が上司に説明しやすいように資料を預けさせてあげることも税務調査を早く終わらせることにつながります。
まとめ
資料を預けた方が調査がスムーズに進むのは間違いありません。 税務署の調査官が上司に説明しやすいようにしてあげることも大切です。それが早期終了につながります。
税務調査は嫌なものですが、協力してあげることで早く終わらせることができます。
今までの経験上ですと資料を預けたからといって不利になってしまうようなことはほとんどありません。
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