楽天やヤフーなどネットショップの税務調査は何をどのように調べるのか
楽天やヤフーなどネットショップをやっている方の税務調査が増えてきています。 何をどのように調査されるのか知っておきましょう。 (税務署はSNSなどは見ています)
楽天などネット関係の収入も税務調査される
勘違いされている方が多いのですが、ネットからの収入も確定申告が必要となりますし税務調査の対象となります。 最近多いのはアフィリエイトやメルカリ、楽天などのネットショップの税務調査です。 調査の連絡が来てから色々調べて確定申告が必要だったことに気づくケースが多いですね。 楽天などのネットショップの収入も確定申告が必要ですのでキッチリ申告しておきましょう。
ネット収入専門の調査官が来る
ネット関係の収入は専門の税務調査官がいます。 「情報技術専門官」です。 参考→ 【情報技術専門官】ヤフオクやアフィリエイトなどネット収入専門の調査官もいる ネットショップの税務調査にはかなり高い確率で情報技術専門官が来るケースが多いです。
特別厳しいわけではない
普通の税務調査官ではないので身構えてしまうところですが、特別厳しいというわけではありません。 あくまでネット収入を専門にしているというだけであって、厳しく調査されるということではありません。 あくまで適正な税金の計算をすることが目的ですので、高い税金を取られるということはないです。
事前に情報を得ている
ただし、事前に情報を得ていることが多いです。 実際にあったのは、まだ会ってもいないのに「楽天とヤフーにショップがありますよね」「IDが3つありますよね」と言われたこともあります。 会う前から事前にある程度調査をしていて、どこからどんな収入があるのか、どんなIDを使っているのか、を知っていることが多いです。 楽天ですとどのプランで契約しているかを知っていたこともありました。 どんな商品を扱っているのかも当然知っています。
本人名義意外のIDを知っていたことも
驚いたのは「本人名義以外のIDも教えてください」と言われたこと。 こちらから家族名義のIDを使っていることなど話をしていないのに家族名義で取引していることを事前に知っていたのです。 かなり幅広く調べてきていることもあります。 仮に他人名義であっても実質的な管理をしている人に税金がかかります。 妻が夫名義のIDで取引をしていても妻に税金がかかってきます。 子供名義なども使って利益を分散させれば節税になると考えている方もいますが、実際に取引を行っている人に税金がかかりますので注意が必要です。
誤魔化すことは無理
あらかじめ情報を得ていることが多いので誤魔化すのは無理です。 税務調査があった場合はネットの履歴、通帳の記録を確認されますので正直に話しをするようにしましょう。
売上の取引履歴は必ず確認される
楽天などの場合は必ず取引履歴の画面を確認されます。
- 売上の確認をするため
- どれくらい取引があるのか
- 在庫がどの程度あるのか
これらが目的です。 売上の確認をすることが最大の目的です。 ネットショップの場合は直接会って現金をやり取りするケースはほとんどないので、履歴と通帳を確認すればほぼ正確な売上を計算することができます。 売上は履歴を見ればわかりますが、通帳への入金額で調べる場合は注意が必要です。 12月分の売上が翌年1月に入金されている場合は1月に入金されたものまで12月分として計算が必要です。 2021年12月分の売上が2022年1月に入金されたら2021年の売上となります。 期ずれといわれるものでよくある間違いなので注意しましょう。 ほぼ確実にパソコンの履歴を確認されます。
売上は取引履歴や入金記録から
売上は楽天やヤフーの取引履歴から確認されます。 もし、何も残っていないような場合は入金記録から調べることになります。 銀行の通帳を紛失してしまっていても明細は再発行できますので、何も記録がない場合は入金記録を確認されます。
ヤフオクの場合は「評価」も見る
実際に確認されたことがあるのは、ヤフオクの「評価」です。 良い悪いではなく「いつから・何件」取引があるかがわかるためです。 いつから取引をしていて収入があったのかがわかるので確認されることとなります。
ヤフーマネーの売上もれに注意!
最近になって電子マネーである「ヤフーマネー」が始まりました。 ヤフオクで売れた場合の収入が銀行に入金されるのではなくヤフーマネーに貯まっていることがあります。 銀行に入金されれば通帳の履歴で把握できるのですが、ヤフーマネーに残ったままだと売上もれとなってしまいます。 先述したように、ヤフオクの履歴などは確認されますので間違いなくヤフーマネーも確認されることとなります。 売上もれとならないように気を付けましょう!
手数料に注意
ヤフーや楽天の手数料が差し引かれて入金されていないか注意しましょう。 売れた金額1,000円、手数料200円の場合は800円が入金されることがあります。 この場合は売上1,000円、手数料200円としなければいけません。 売上800円とすると間違いです。 利益は変わらないのですが消費税に関係してきますので注意が必要です。
経費に入れることができるもの
もちろん経費になるものもあります。 一般的には、
- 仕入
- 手数料
- 発送料
- 梱包材
- 通信費
- 電気代
などです。
仕入
モノを仕入たときは仕入として経費にすることができます。 購入したときの明細(領収書やレシート)は必ず保管しておきましょう! 万が一、領収書などがなくてもカード払いであればカード明細があれば認めてもらえることがあります。 カード明細はカード会社に問い合わせすれば再発行が可能です。 仕入だけでなく他の経費(通信費など)の支払をカード明細から判明することもありますので、紛失などしている場合は再発行の手配をしておきましょう。 注意点は自分で使ったものとの区別をすること。 服を販売している場合に売るために仕入として買ったのか、自分で着るために買ったのかをちゃんと分けないといけません。 もちろん自分用として買ったものは経費にはなりません。
手数料は経費になる
落札手数料や出店の手数料ももちろん考慮されます。 たとえ金額がわからなかったとしても、利率がわかっているのであれば計算ができます。 売上は取引履歴で確認できますので利率をもとに手数料を計算できます。 楽天やヤフーに支払う手数料は経費にすることができます。
発送料も経費にできる
商品を発送する際の発送料も経費にできます。 具体的な金額がわからなかったとしても合理的に計算できれば経費として認めてくれます。 取引履歴を確認すればどれくらい販売しているかの個数がわかります。 仮にレターパックで送っているなら個数×360円などで計算することも可能です。 領収書など明細の保存はしておきましょう。 ない場合でも発送していることは間違いないので合理的な方法で経費の金額を計算することになります。
梱包材
商品を発送する際の梱包材も経費になります。 段ボールなどはもちろん、中に入れる緩衝材のようなものも経費になります。
通信費
もちろん通信費も経費になります。 ネット接続料、スマホ代なども経費にできます。 タブレットを使っているならその通信費も経費にできます。 ただ、全額は経費にできませんのでどれくらいの割合を使っているかは検討する必要があります。
パソコン
ネットショップはパソコンも必要となりますので当然経費にすることができます。 ただこちらもどれくらいの割合で使っているかは検討が必要です。 高額な場合(原則として10万円)を超える場合は減価償却という特殊な計算が必要となります。 自分で計算ができなくても購入した際のレシートや領収書などがあれば税務署側で計算してくれます。 減価償却は決められた計算方法に基づいて算定しますので税務署側で計算しても不利になることはありません。
電気代
電気代も経費になります。 こちらも割合の検討は必要です。 似たようなもので水道代やガス代は経費にはできません。 一般的にネットショップで水道やガスを使用することはほとんどないため経費と認められる可能性は低いです。
在庫はひとまず最終年だけで大丈夫
販売業の場合は在庫を計算しなければいけません。 年末時点で売れ残っているものは在庫となりますので、何がいくつ残っているかを調べる必要があります。 在庫によって利益が変わってきますので税金も変わります。 そのため税務調査でも必ず在庫はチェックされます。 とはいえ、過去の在庫を計算するのは難しいです。 正確な金額は無理ですしおおよその金額を計算するのも大変です。 ただ、税務調査の際にはひとまず最終の年だけ在庫を計算すれば大丈夫です。 細かい説明をすると長くなるので省きますが、去年の在庫は今年に経費になり、今年の在庫は来年に経費になるので在庫は年をまたいで経費になるものです。 なので、2015年の在庫は2016年の経費、2016年の在庫は2017年の経費になります。 経費になる年がずれるだけでいつかは経費になるものなのです。 最終年の在庫を計算すればトータルではOKとみなされることもあります。 税務調査の対象年数が2015年、2016年、2017年であれば2017年だけ在庫を入れて帳尻を合わせることが多いです。
現在の在庫でも
最後の年だけとはいえ過去の在庫を計算するのは非常に大変です。 扱っている品数が多いほど大変になります。 どうしても難しい場合は今現在の在庫を使う場合もあります。 扱う商品の内容や数が大きく変わっていなければ在庫も同じくらいだろうということでその時点の在庫金額を用いることもあります。 モノを販売している場合は必ず在庫はチェックされますので注意しましょう!
問題は消費税
消費税は売上が1,000万円を超えると納税の必要がでてきます。 利益ではなく売上です。 例え利益が少なくても売上が1,000万円を超えていると消費税の納税義務があります。 ここで問題となるのは帳簿があるかどうかです。 消費税も経費は認められるのですが、原則として領収書やレシートのほかに帳簿の保管が要件となっています。 帳簿がないと消費税では原則として経費を認められません。 領収書やレシートなどで支払いの事実がわかる場合は経費を認めてくれたケースもありますが、原則としては認められないので税務署側で原則通りの扱いをされてしまうと高額な納税が必要となってしまうこともありえます。
無申告・売上が違っている場合は大変
特に大変なのは無申告や売上が違っているケースです。 帳簿は申告期限から今までずっと保管していなければいけない、となっていますので無申告の場合は帳簿があるはずがありません。 帳簿があったのに無申告となると余計に大変です。 売上が違う場合には対策が必要です。 参考→ 売上が間違っている・除外している・誤魔化している場合の税務調査対策
輸入には注意
海外から輸入して仕入れているケースもあります。 その場合は輸入消費税を控除することが可能です。 税関で関税などと一緒に輸入消費税の支払いがある場合は控除できます。 税務署側から言ってくれないこともありますので、輸入している場合は控除忘れがないように注意しましょう。
納税の意識があったか?を確認される
ネットで収入を得ている方の多くが「最初はお小遣い稼ぎだった」と言います。 厳しい言い方ですが、例えお小遣いのつもりだったとしても利益が出ているのであれば納税が必要となります。
業績を把握していたか?
確定申告をせずに無申告でいる場合も多いです。 確定申告はしているけれど実際の数字と大きく違ってしまっているケースもあります。 そのような場合に確認されるのが「業績を把握するようなものがあったか?」です。 なぜ業績を把握できるようなものがあったかを確認されるかというと、納税の意識があったかどうかを確認するためです。 売上・利益があることを把握しているのに納税していないとなると「税金を誤魔化そうとしていた」と判断されることもあります。 そんな意図はなかったとしても客観的な事実だけでそのように判断されてしまうこともありえます。 注文や落札された後にいつ・どこに・何を発送したかなどの記録も保存が必要なのですが、このような資料をちゃんと保管されていると「業績をある程度把握できていた」と判断されることもあります。 保管しない方がいいというわけではなく、ちゃんと申告が必要だということです。
どのような税金がかかってくるのか
個人の場合は税務調査で追徴税額が発生するものとしては、
- 所得税
- 消費税
- 住民税
- 事業税
- 国民健康保険
があります。 その他に児童手当のような所得制限があるものの支払いを受けているとその返還を求められるケースもあります。 これらについて最大で過去7年分の調査をされます。 参考→ 個人事業主の税務調査は何をどこまで調べられるのか? 売上だけは最高で9年前までさかのぼって調べられることもあります。
税金の支払いができない場合
ネットショップをされている方に多いのが、納税するお金がないと言われることです。 500万円利益が出てると言われても実際にそんなにお金がないと言われます。 たいていの原因は在庫です。 売れたら次の仕入をする、また売れたら仕入れる、と繰り返していくうちに儲かったお金で仕入をすることが多いのでお金が在庫に変わってしまっているんですね。 この場合、税務署側は何も考慮してくれません。 お金があるからたくさん納税してもらう・お金がないから税金を少なくするようなことはしてくれません。 あくまで適正な税金を計算する形になります。 消費税の納税が必要になることも多いので納税が多額になるケースもあります。
原則は一括
税務調査は数年分の税金が発生することも珍しくありません。 さらには過少申告加算税・延滞税・住民税・事業税・国民健康保険などもきます。 相当な高額になることもありますので、一括で無理な場合は個別に相談して分割での支払いも可能です。 「猶予の申請」という手続きがありますのでこちらを利用することも検討しましょう! 絶対にいけないのは相談もせずに無視することです。 必ず相談するようにしましょう。
まとめ
楽天やヤフーなどネットショップの税務調査が増えています。 最初はおこずかい稼ぎであっても徐々に増えてきて気づけば相当数の販売をしていることもあります。 場合によっては消費税がかかってくることもありえます。
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