個人事業主の税務調査でチェックされやすい科目と対策
個人の税務調査では必ずチェックされる科目があります。
その科目だけ気をつければいいわけではありませんが、どこを重点的に確認されるか・どうすればいいのかは知っておきましょう。
ポイントを絞って調査される
税務調査は限られた時間で申告内容が正しいか、間違いがないかの確認をしなければいけません。
そのため効率的に進められることとなります。
本来であれば細かくすべてを確認して一円単位まで調査をするべきなのですが、限られた時間ではそこまでやるのは無理です。
時間をかけて調査をするのは税務署側もこちら側も負担になりますので大変です。
そうなると効率的に進めるためにポイントを絞って調査を進めることになります。
税務調査ではよく見られるポイントがあります。
もちろんケースにより違いますが一般的に見られるところは決まっているのです。
個人の税務調査で確認される科目
個人事業主の税務調査で確認される科目は
- 売上
- 仕入
- 外注費
- 給料(専従者)
- 交際費
- 地代家賃
- 通信費
- 水道光熱費
- 雑費
- そのほか金額が大きい科目
このような科目はチェックされる可能性が非常に高いです。
売上金額
売上は間違いなく確認されます。
どんな業種、仕事であっても売上が一番重点的に調査されます。
よくある間違いは期ズレといわれるものです。
個人の場合は1月分から12月分の12ヶ月分が売上となります。
入金された金額ではなく1月締めから12月締めで考えます。
仮に入金ベースで計算していたら修正が必要となりますが、単純な間違いですので大きな問題とはなりません。
対策
対策としてはとにかく売上もれがないように気をつけましょう!
複数の銀行口座に入金されているならすべてをちゃんと集計する。
現金売上も領収書を発行して保存、集計にも入れる。
一度集計した後にちゃんと12か月分が計算されているか確認した方がいいです。
計算間違いや勘違いは誰にでもあることですが、絶対にやってはいけないのは意図的に売上をごまかすことです。
売上のごまかしは一番厳しく対応されます。
繰り返しますが、計算間違いなどは誰にでもあることです。
意図的に売上を抜く、ごまかすことは絶対にやめましょう!
仕入
売上と同じく仕入がある場合は仕入もチェックされます。
本当に仕入であるのか、在庫も確認されます。
在庫によって利益が変わってきますので必ずチェックされます。
あとは仕入から売上もれが発覚することもあります。
仕入が10個あるのに売上が9個しかなかったら1個の売上がもれている可能性があります。
その1個が在庫になっていればいいのですが、そうでない場合は売上もれかもしれません。
売上とのつけあわせができる場合はそれにより売上もれがわかることもあります。
対策
仕入については在庫に気を付けましょう。
上述したように10個仕入れて9個売れたら1個は在庫になるはずです。
在庫のもれは指摘されることが多いです。
仕入から売上もれが発覚することがありますが、売上についてはしっかりともれがないようにしておけば大丈夫です。
外注費
外注費は間違いなく確認されます。
よほど少額でない限りはチェックされるでしょう。
相手先の名前、住所、生年月日、連絡先などわかる範囲の情報を聞かれることが多いです。
領収書や請求書はもちろん確認されますが、それ以外に連絡先や生年月日なども聞かれるケースが多いです。
生年月日などはわからないことも多いので答えられなくても問題はありません。
対策
建設業など現場で現金払いしていて領収書など何も資料がないと証明することができません。
請求書を発行してもらって振込で支払えば一番いいのですが、難しい場合は何かしら支払いの事実が確認できるものは残しておくべきです。
最悪の場合は否認(ダメ)といわれてしまうこともあります。
金額が大きい場合にはダメといわれてしまうと影響が大きいですから注意が必要です。
特に消費税は何かしら支払いの事実が確認できないと経費として認められないこともあり、かなりの負担となることがあります。
どうしても領収書や請求書が無い場合は手帳や出面帳で、いつ・誰に・いくら支払ったのかの記録をつけておくようにします。
記録をつけておけば絶対に大丈夫というわけではありませんが何も資料がないよりは主張しやすくなります。
外注費は領収書など何も資料がないことが非常に多いので気をつけましょう!
給料(専従者)
給料も外注費と同じくチェックされる可能性が非常に高いです。
架空人件費の確認をされます。
ごまかしやすいところでもありますので税務署側もよくわかっています。
家族に対する給与についても届出書の状況や仕事内容、金額が妥当かも調査されます。
届出書が提出されていても仕事の実態がない場合はダメといわれてしまいます。
支払いの事実がない場合もダメです。
給与(専従者も)チェックされる項目です。
対策
従業員を雇っている場合は給与明細、履歴書などはしっかりと保存しておきましょう。
勤務実態がわかる資料もあるとより良いです。
架空人件費でないことを証明できるようにしておきましょう。
白色申告の専従者控除の場合は、本当に仕事を手伝っているのかが問題となります。
何かしらの資料を提示して実際に仕事を手伝っていることを説明できるようにしておいた方が無難です。
青色専従者給与の場合は届出書の内容を確認しておきましょう。
実際に支払の事実がないとダメです。
現金よりは振込で支払っておいたほうが説明しやすいでしょう。
仕事内容に応じた給与金額なのかも重要です。
仕事の内容も説明できるようにしておくべきです。
仕事の内容に対して給与金額が高すぎるような場合は否認(ダメ)と言われてしまうこともあります。
交際費
交際費で指摘されることが多いのが食事代です。
仕事と関係のない、自分だけの食事代や家族との食事代が経費になっていないかは必ず調べられます。
領収書を一枚一枚チェックされるのも交際費が一番多い印象です。
飲食代の領収書に「お子様セット」「自宅近くのお店ばかり」だと家族との飲食代を疑われます。
「同じ日に仕事の現場と離れすぎている領収書」も仕事とは関係ない家族が食べたものではないかと思われます。
あと、よくあるのが慶弔費です。
お祝いなどは領収書が発行されませんから、本来は支払いがないのに経費にしていることも多いです。
税務署もよくわかっていますので、慶弔費が多い場合には誰に支払ったのかなど聞かれることもあります。
交際費は経費の中でもしっかりと調査されることが多い項目です。
対策
飲食代の場合は領収書やレシートの裏に、誰と・何のために、を記載しておきましょう。
記載が無いからといってそれだけで経費が認められないことはありませんが、記載しておいた方が経費であることを主張しやすいです。
よくあるのが、自分の飲食代を経費にしているケースです。
自分の飲食代は経費にはなりませんので気を付けましょう!
自販機などでお茶を購入したような場合は領収書が残りませんから、いつ・いくら購入したかのメモを残しておくようにしましょう。
地代家賃・通信費・水道光熱費など
地代家賃、通信費、水道光熱費は生活費との関連性を指摘されることが多い項目です。
自宅で仕事をしていれば自宅家賃を経費にすることもできますが、ちゃんと仕事と生活費を合理的に分けて計算しなければいけません。
スマホ代や電気代なども同様です。
よくあるのが全額を経費にしていることです。
家賃の全額を経費にしていたり、スマホ代や電気代を全部経費にしていることがあります。
自宅でしたら生活費も当然あるわけですので合理的に割合を計算しなければいけません。
何割が経費になるのかはケースごとに違います。
自分でどの程度を仕事として使っているのかを計算して、それを税務署側に説明できるようにしておく必要があります。
水道光熱費の中にガス代や水道代まで経費にしていることがあります。
本当に仕事に使っているのならいいのですがそうでない場合は経費にできません。
ガスや水道を仕事に使うケースは少ないので、経費にしていると指摘されます。
対策
自宅家賃や光熱費など仕事と生活費の両方に使っているものは、仕事の割合がどれくらいなのかを明確に説明できるようにしておく必要があります。
自宅家賃の場合は例えば、全体の広さのうちのどれくらいの部分を仕事として使用しているのか。
スマホ代は仕事の通話がどれくらいなのか。
車を仕事と生活で使っているなら、一週間のうち平日に仕事として使っていれば7分の5が経費など。
仕事と生活の両方に使っているものは100%を経費にはできません。
何割が経費なのか、どうやって何割かを判断したのか、を説明できるようにしておきます。
雑費
一般的に雑費はどの項目にも当てはまらないものになります。
その雑費の金額が大きいと内容を調査されることとなります。
雑費の金額が大きい場合には生活費が入ってしまっていることがあります。
対策
なるべく雑費は使わないようにして、ほかの科目を使うようにしましょう。
当てはまる科目が無い場合は自分で科目を作っても大丈夫です。
科目は何であっても問題ないのです。
ガソリン代を旅費交通費、消耗品費にしていても問題ありません。
人によってはそのまま「ガソリン代」と記載していることもあります。
スマホ代を通信費に入れていても「スマホ代」と記載してもまったく問題ありません。
当てはまる科目がない場合はわかりやすい科目を自分で記載するようにして、雑費はなるべく使用しないようにした方が良いです。
本当に経費であれば雑費としていてもいいのですが、雑費が多いと税務調査に入られる可能性が高くなります。
なるべく雑費は使わないようにしましょう。
金額が大きな科目
税務調査では金額が大きい科目も内容を調査されます。
業種によっては特殊な科目を使っていることもあり、金額が大きくなることもあります。
そのような科目についても調査の対象となります。
対策
どのような経費なのか内容を説明できるようにしておきましょう。
実際に経費であればまったく問題ありません。
一般的な経費と同じように領収書や請求書などを保存しておきましょう。
まとめ
売上については抜け・もれがないようにしましょう。
経費については領収書や請求書を保存しておくこと。
そして内容を説明できるようにしておくこと。
こられが大切です。
意図的に少なく申告するようなことも絶対にダメです。
内容をちゃんと説明できるようにして、しっかり申告しておくことが税務調査の対策となります。
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