【個人の税務調査の実例】脱税を疑われて質問応答記録書を作成された
個人の税務調査では正式な記録を残すために「質問応答記録書」を作成することがあります。
これは税務署側が重加算税を検討している場合に作成されることが多いので注意が必要です。
領収書やレシートの紛失
エンジニアの個人事業者から税務調査対応の依頼をいただきました。
ご自身で確定申告書を作成して提出されていました。
売上金額については毎月1回の振込入金なので容易に計算ができます。
ただ、経費については領収書やレシートをエクセルに集計していただけでした。
確定申告書を作成する際にエクセルで計算してその後は袋にいれて保管していたようです。
ですが、税務署から税務調査の連絡が来てから領収書等を探してみると紛失していることに気づいたのです。
そこで私にご相談がありました。
できるだけ再発行する
領収書やレシートを紛失しているからといって経費がまったく認められないわけではありません。
通常発生しているだろうと思われる経費については認められます。
販売業であれば商品の仕入れがあるはずですので、何も資料が無いからといって仕入れが無いということにはなりません。
ですが、資料が残っていない場合は不利になってしまうのは当然です。
可能な限り再発行してもらうようにしました。
クレジットカード明細なども再発行を依頼してもらいました。
税務調査当日に用意ができなかったとしても後日に提示できれば問題はありません。
質問応答記録書の作成
税務調査当日までに可能な限り再発行をしてもらいましたが、それでもすべてを揃えることはできませんでした。
調査官には紛失した旨を正直に伝えました。
すると「質問応答記録書をとらせてもらいます」と告げられました。
質問応答記録書は税務署側の質問にどう回答したかを記録として残すものです。
もし訴訟になった場合には証拠となるものです。
質問応答記録書が作成されるときは税務署側が重加算税を検討しているときです。
そのため注意が必要となります。
このケースでは引っ越しをした際に誤って紛失してしまったのですが、意図的に破棄したのではないかと考えられていたのです。
保存しておくべき資料を意図的に破棄したのであれば重加算税となってしまうこともあります。
質問応答記録書の対策
- 内容をチェックして誤りは修正してもらう
- 細かい文言まで気を付ける
- 署名は任意
- 最後に自分の考えを追加してもらう
質問応答記録書は調査官がその場で作成します。
質問に対する回答を記録するのです。
内容のチェックはしっかり
質問応答記録書は税務署側が作成するものですが、一方的に作成されるのではなく納税者側が内容をチェックできます。
内容をチェックしたうえで誤りがあれば修正してもらえます。
この内容をチェックは非常に重要です。
面倒に感じてしまって「まぁいいや」とそのままにしてしまうと、あとで重加算税を課せられてしまう可能性もあります。
売上除外などがあると「納税の負担を減らしたかったのでわざと売上除外した」のように書かれてしまうこともあります。
単純な計算間違いや勘違いであるならしっかりと修正してもらわないといけません。
細かい文言まで
内容のチェックは細かい文言まで必要です。
「破棄」ですと意図的に捨てたようなニュアンスになります。
「紛失」であれば意図的ではないことを示せます。
本来は紛失であるのに「破棄」と書かれてしまうと重加算税になってしまうこともあります。
細かいところですが、これくらい細かくチェックする必要があります。
最後に自分の考えを
質問応答記録書の最後には自分の考えを書いてもらうことも可能です。
「最後に何か付け加えたいことはありますか?」と聞かれますのでそのときに伝えましょう。
この税務調査のケースでは最後に「資料を紛失してしまったが意図的ではなかった」「今後はしっかりと保存するようにしたい」と加えてもらいました。
別の税務調査では「売上げの間違いは納税の負担を減らしたいわけではなかった」「ごまかすつもりはなかった」と書いてもらったこともあります。
調査結果
この税務調査では結果として、重加算税にはなりませんでした。
食事代などは一定額を減額されましたが大きな問題はなく終了となりました。
質問応答記録書は重加算税を検討しているときに作成されることが多いのですが、作成されたからといって必ずしも重加算税になるわけではありません。
しっかりと対応するようにしましょう。
私も税務調査のご相談をお受けしております。
お困りの際は下記よりご相談ください。
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