はじめての税務調査。税務調査の基本まとめ
法人化や個人事業を開業して事業をやっているといつかは税務調査があります。
実際の税務調査のときには調査官への対応はどうすればいいのでしょうか?
税務調査の基本を知っておきましょう。
税務調査がどのようなものなのか知っておけば過度に恐れる必要はありません。
税務調査とは
そもそも税務調査とは何でしょうか? 所得税や法人税は自分で税金の計算をして申告をすることになっています。
自分で申告するので「申告納税制度」と言われます。
自分で申告するわけですから、当然ながら間違いや不正(脱税)などをすることもありえます。 そういった税金の間違いなどがないかを確認するために行われるのが税務調査です。
税務調査は突然来るのか?
税務調査は突然来ることはほとんどありません。
事前に連絡があります。 「5月20日と21日に税務調査に行きたいのですが」と連絡が来るのです。
何度も税務調査の立ち会いをしていますが通常は事前に連絡があります。
ただ、脱税の証拠を掴んでいたり、現金商売などでは直接税務署が来ることもあります。
知り合いの税理士のお客様で突然税理士が来た、と聞いたこともあります。
参考 → 税務調査の流れや聞かれたこと
税務調査の日程は変更はできる
税務署から「5月20日に税務調査に行きたい」と言われても必ずその日でないといけないわけではありません。
あくまで仕事を優先して大丈夫です。
都合が悪いなら変更してもらうことも可能です。
私も何度も税務調査の立ち会いをしていますが、ほとんどのケースで日程変更をしています。 お客様、税理士、税務署の都合が合わないといけないのでなかなか大変なのです。
日程変更したからといって不利になることはありません! 何度何度も変更していると怪しまれますが、本当に都合が悪いのなら変更してもらうようにしましょう。
税務調査はどれくらいの頻度でくるの?
税務調査は設立や開業してすぐには来ません。
よっぽど申告書の数字がおかしいなら来るかもしれませんが、まずありません。 大抵は3年程度たってからきます。 どれくらいの頻度でくるのかはなんとも言えません。
きっちり3年おきに来る会社もあれば10年以上一回も来ない会社もあります。
利益が出ていても来ないし、赤字でも来た場合もあります。
もちろん、税務調査が入りやすい会社もあります。 税務調査に来る・来ないはなんとも言えないのです。
税務調査は3年分を見る
基本的に税務調査は3年分をみられます。
3年分の帳簿を確認して間違いなどを確認されます。
悪質な脱税や粉飾などをしていると5年分を見られることもあります。
通常3年、悪くて5年、最悪7年と覚えておきましょう。
税務調査に入りやすい会社はある?
税務調査が入りやすいケースは次のような場合。
- 黒字の場合
- 売上や利益が急激に増えている
- あまり発生しない経費(退職金や貸し倒れ)などが多い
- 消費税の還付を受けた
- いつもと比べて粗利などが急激に変化している
- 税理士がいない
などなど。
基本的には黒字の会社が多いです。
黒字の会社の方が税金が発生するので当然です。
売上や利益が急激に増えている場合も税務調査の対象になりやすいですね。
売上の漏れなどがないかをチェックされます。 普段はあまり発生しないような退職金や貸倒などがあると税務調査が来たりします。
大きな経費を使って納税額を減らそうとしているのではないか、と思われるのです。
いつもの年と比べて変化が大きいと税務調査の対象になりやすいです。
あとは、税理士がいない法人や個人。
法人税や所得税の確定申告書には税理士の署名押印をする欄があります。 税理士に依頼しているとここに税理士の署名押印がされますが、自分でやっている場合などは何も記載されていません。
税理士の署名押印があるかないかで信頼度は大きく違ってきます。
税務調査が入りやすい業種
業種によっても税務調査の対象になりやすいものがあります。
- 不動産業
- 風俗業
- キャバレーやバー
- プログラマーなどIT系
震災により特需があった会社なども対象になりやすいです。
これらの業種だからといって必ず税務調査があるわけではありません。
こちらも参考に。 → 税務調査が入りやすい会社は?赤字でも税務調査はある
税務調査が多い時期
実は税務調査に入りやすい時期があります。
税務調査が多いのは8月から11月頃です!
税務署は7月に人事異動があります。
人事異動の前までには税務調査を終わらせないといけないので7月前は当然税務調査は少ない。
人事異動が終わった後の8月から多くなるのです。
12月から3月、5月までは年末調整・確定申告・3月決算の会社が多いのでこれらの処理に時間がかかっているのです。 8月から11月が多いというだけでその他の時期にも税務調査はあります。
確定申告で忙しい3月に税務調査の連絡があったこともあります。
税務調査で必ず税金を取られるの?
税務調査に来ると必ず税金が取られるわけではありません。
税務調査に来たけど追加の税金が発生しなかったことは何度もあります。
税務署もどれだけ追加の税金が取れるかは自分の成績になるのですが、 一番の目的は正しい申告をしてもらうための指導をすることなのです。
よく「お土産」を渡した、何て言いますが今はあまり聞きません。
※お土産とは小さい間違いのこと 税務調査があるからといって必ずしも追加の税金が発生するわけではありません。
税務調査では何を見られるの?
税務調査で見るのは基本的には帳簿です。 用意しておくものは、
- 総勘定元帳
- 通帳
- 売上に関する資料(請求書など)
- 仕入れや経費に関する資料(請求書や領収書)
- 人件費に関する資料(給与明細や源泉徴収簿)
- 契約書
- 議事録
などです。
税務調査はこれらの資料を見て疑問点などを答えていく作業になります。
事務所やパソコンも見られる
実際にあったケースで事務所の中やパソコンを見られたこともあります。
事務所の机に従業員の誰がどこに座っているのかを聞かれたことがあります。
架空人件費がないかどうかなどを調べているのです。
パソコンを見られたこともあります。
もちろん税務署の調査官が勝手に見ることはありません。
社長や経理の方が立ち会いしてパソコンのデータを見られます。
メールの履歴などで税金を不正に減らそうとした記録がないか、 議事録や契約書の作成日時を調べたりするのです。
机の引き出しを調べられたりもします。 税務調査に関係ないものは見られませんが、見られたくないものなどは事前に整理しておいた方がいいです!
税務調査は事前準備が大切!
パソコンを見られることもあるので余計なものは整理しておく必要がありますが、税務調査で大切なのは何より事前準備です!
ちゃんと必要な資料などが揃っているかを事前に確認しないといけません。
調査当日になって慌てて探しているようではダメです。
調査が長引いてしまいますし、管理体制が悪いと印象も悪くなってしまいます。
何より、事前準備をすることで罰金を減らすこともできます!
仮に間違いなどを見つけたら税務署から指摘される前に自ら修正をすることで罰金を減らすことができるのです。
こちらに記事を書いていますので参考にしてみてください。
→ 税務調査で余計な罰金を払わない!事前に絶対やるべき2つのこと
無申告の状態で税務調査の連絡があったら
税金の申告をしていないのに税務調査の連絡があったら赤信号です!
一刻も早く申告するようにしましょう。 税務署は一方的に「あなたの税金はいくらだから払いなさい」と決めることができるのです。
しかも、罰金も相当なものになります。
もし、無申告の状態で税務調査の連絡があったらまずは税理士にすぐに連絡しましょう。
税務署の調査官も人間
当たり前ですが、税務調査に来る調査官も人間です。
過度に敵対心を持ったり恐れたりする必要はありません。
気を使いすぎるようなことをしなくてもいいです。 基本的には普通のお客様として扱えば大丈夫です。
お茶やコーヒーを出す程度で大丈夫です。
お昼のお弁当などは用意する必要はありません。
昔はこちらで用意したお昼を食べていたようですが、今は食べることはありません。
食べたとしても必ずお金を支払います。ごちそうになる、ことはありません。(最近はまったく食べません)
税務調査は朝10時に開始して16時頃に終了することが多いです。
12時になったらお昼で外に出て、13時頃に戻ってくる。 16時頃に出て税務署に戻っていきます。 調査官がいる間は、お茶やコーヒーを出しておく程度で十分です。
調査官の態度が悪いときは
こちらがちゃんと対応していても態度の悪い税務署の調査官もいます。
私も実際に体験したことがあるのですが、常に上から目線で偉そうな言葉でしゃべる調査官がいるのは事実です。
もし、そのような調査官がいたら注意しても問題ありません。
注意してもダメなら税務署に連絡しても大丈夫です。
「今ウチに来ている調査官の態度が悪くて困っている」と伝えましょう。 税理士に立ち会いをお願いしているなら税理士に言ってもらってもいい。 態度が悪いなら我慢することはありません。
税務調査ではコピーを取る
税務調査に来るとコピーを取ります。
今まで何回も税務調査に立ち会いをしましたが毎回コピーを取っています。
契約書や請求書、帳簿など確認したいものはコピーを取るのです。
税務署に持ち帰って調べたり上司に相談しているのです。
コピーをお願いされることもあるのですが、基本的には税務署の調査官の仕事です。
コピーで経理の方の時間が取られてしまうのでできれば調査官に自分でやってもらうようにした方がいいです。
あとコピー代として常識の範囲内で請求することも可能です。
1枚10円くらいで請求しても問題ありません。
調査官の方からコピー代はいくらですか?と聞かれたこともあります。
税務調査の当日は会議室を用意する
税務調査は基本的に会社や個人事業主の事務所に来ます。
税務調査の日程が決まったら会議室を押さえておきましょう。
個人事業主など会議室がない場合は、他の場所でも可能です。 実際に会議室を借りて税務調査を受けたこともあります。
その場合は請求書や帳簿など必要書類をすべて移動しておかなければいけません。
税務調査の際には「場所」を確保しなければいけません。
社長や代表者はずっといなくてもいい
税務調査は初日の午前中は会社や事業の概況確認です。
どのような事業をやっているのか、を調査官が社長や事業主に質問します。
実際に聞かれたことはこちらに書きましたので参考に。
会社の概況を確認が終わったら細かい帳簿の確認となります。
この帳簿の確認のときには代表者や事業主の方は同席する必要はありません。
税理士が立ち会いをします。 調査官から聞かれたことについて税理士が回答します。
社長に聞かないとわからないものはまとめて後日回答するようにするのです。
なので、会社の代表者や事業主の方は税理士に立ち会いをお願いすれば 事業概況の確認が終わり次第、仕事に戻っていただいて問題ありません。
わからないことは即答しなくていい
調査官から質問されたことについて分からなかったり、忘れていたらすぐに回答する必要はありません。
税務署からの質問にはすぐに答えないと!と考えている方もいますが、そんなことはありません。
即答して間違ったことを言うよりもちゃんと調べて正しいことを回答した方がいいのです。 分からないことを聞かれたら「調べて後日回答します」といえばいいのです。
無理にその場で答える必要はありません。
そもそも、税務調査で見るのは数年前の帳簿です。 数年前のことなんて全部覚えていられませんよね。 即答できなくてもなんの問題もありません。
税務調査は来て終わりではない
税務調査はたいてい2日から3日間で帳簿を見ます。
実際に調査官が来るのは2、3日ですがそれで税務調査が終わるわけではありません。
調査官が来て帳簿を見て終わり、ではないのです。
税務署の調査官は公務員ですが、税務署に戻って上司に報告しなければいけません。
調査結果を上司に報告して、問題がなかったか、どこが問題だったか、などを報告するのです。その結果、上司からもっと調べるように言われたりすることもあるのです。
しばらくしてから「この件についてもう少し調べさせてください」とか言って来たりします。 調査官が来ているときだけが税務調査ではありません。
今までの税務調査で一番長かったのは半年くらいかかったこともあります。 税務調査は長引くことがあることを覚えておきましょう!
税務調査はどうやって終わる?
税務調査は税金の間違いがないかを調べるものですから、 間違いがなければそのまま、間違いがあれば修正することになります。
そのままか修正か、です。
ただ、実際の税務調査はそう簡単ではありません。 「落としどころ」をどうするか、の調整が難しいのです。 税務署が指摘してくる内容は、
- 絶対に修正しないといけないもの
- できれば修正してほしいもの
- とりあえず指摘しておくもの
があります。
絶対に修正が必要なもの
税金の計算や取扱を間違えているものは絶対に修正しないといけません。これはどんな言い訳も通じないので絶対に修正することになります。
グレーゾーン
できれば修正させたいもの、もあります。
いわゆるグレーゾーンというものです。考えようによっては経費にもなるようなものなんかが多いです。
このグレーゾーンの取扱をどうするか、が落としどころの調整になります!
これは認めるけどこっちは認めない、といったような交渉をするのです。
どうすれば納税の負担が少なくなるのか、早く税務調査を終わらせるにはどうすればいいか、などをよく考えたうえで交渉することになります。
このグレーゾーンの取り扱いは非常にやっかい。 前回は認められたのに今回はダメだった、ということが起こり得るのです。
税務調査の結果に納得いかないときは
税務調査の終わりは、何も間違いがなくそのままか修正するかです。
修正というのは間違いを認めて修正するという意味があるのです。
なので、税務署としては修正をしてもらったほうがいいのです。
修正するということは、間違いを認めたことになるので後々もめることがないのです。
ずっと認めないでいると、税務署は更正というものをします。
更正は一方的に「こうだ」と決められることです。
一方的に決められると納税者としては納得いきませんよね。
そのときのために、不服申し立てができることになっています。
あと、青色申告の場合には更正するときにちゃんとした理由をつけないといけないことになっています。
要は、税務署は一方的に更正により税額を決めることができるけど、何かともめることになりやすく手続きが面倒なんです。だからなるべく更正はしたくないのです。
どうしても税務署の更正に納得がいかなければ不服申し立て、裁判となりますがそこまでするのは非常に稀です。
なにより非常に手間がかかってしまいますので、それだったらちょっと税金を払っても早く終わらせたいと考えるケースが多いのです。
税務調査の結果に納得がいかないときは争うこともできますが、それにかかる時間や手間は相当なものになります。
税務調査で逮捕されることは少ない
税務調査というと、とにかく怖いイメージを持っている方も多いですが恐れることはありません。
仮に税務調査で追加の税金が発生したとしても逮捕されることなんてほとんどありません!
通常は追加の税金と罰金を支払って終わりです。 中小企業で逮捕なんてまずありませんので安心してください。 (罰金は痛いですが。) よっぽどの脱税をしていない限り捕まることはありません。
青色申告の取り消しはされる可能性がありますが、逮捕までいくことはほとんどありませんよ。
私は15年くらい税理士業界にいて何度も税務調査を見てきましたが一度も逮捕された方はいません。
逮捕されることは絶対に無い、とは言い切れませんが過度に心配する必要はありません。
まとめ
税務調査はどのように行われるのかを知っておけばそんなに恐れることはありません。
本来支払うべき金額以上の税金を取られることもありません。
過度に心配をする必要はありませんが、自分だけで対応するのは非常に大変です。
できれば税理士に立ち会いをお願いした方がいいでしょう。
私も税務調査ご相談をお受けしております。
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