個人事業主の経費のまとめ。経費にできるもの・領収書がないとき・いくらまでなら大丈夫?
個人事業主の経費は注意が必要です。
法人であれば「利益を追求すること」が前提となっているのである程度経費にすることができますが、個人事業主の場合は生活費との兼ね合いもありますので気を付けなければいけません。
経費にできるもの・できないもの、領収書が無い場合、どれくらいの金額なら大丈夫なのかを書いています。
経費にできる・できないの基準
個人事業主の場合は法人に比べると経費にできるものが限られます。
法人は活動目的が「利益を追求するため」となっているので法人が行うものは事業であると判断されやすいですが、個人事業主の場合は生活費と一緒になっていることがあるので経費については注意が必要となるのです。
結論から言うと経費になるかどうかの基準は、売上を得るためのものかどうか、ということです。
経費になるもの・ならないもので迷ったら売上を得るために必要かどうかを考えてみてください。
事業で使っているかどうかと言い換えてもいいです。
売上がなくてもいい
売上を得るために必要なもの、と書きましたが実際には売上がなくても経費にできる場合もあります。
・売れると思って新しい商品を仕入れたけどまったく売れず廃棄した。
・新規事業を始めるために色々準備して費用がかかったけどダメになった。
このような場合は売上はありませんが仕入れや準備費用は経費にすることができます。
売上を得ようとしてかかったものだから経費にすることができるのです。
もちろん「売上を得ようとした」と言うのは簡単ですから、それを示すことが必要となります。
※商品は手元に残っていたら在庫となるので経費にできないことがあります。
事業用か生活費か
ここで問題となるのが「事業用か生活費か」です。
後述しますが、事業と生活が一体となっているようなものもありますよね。
これは、第三者が見て事業と使っていると思われるか、一般的に考えて仕事に使っているといえるか、で判断するしかありません。
判断するのは税務署です。
税務調査があったときに本当に事業として使っていると説明できるかどうか、が大切です。
こじつけで経費にしていると税務調査のときにダメと言われてしまいます。
生活費と一緒になっているもの
もう一つ、個人事業主が迷うのは生活費と一緒になっているようなものです。
例えば家賃。
自宅で仕事をしている場合は当然経費にできますが、住居にもなっているので全部は経費にできません。
車も同じですね。
平日は仕事で使うけど休日はプライベートに使っているなら全部は経費にできません。
パソコンなども同じ。
仕事でも使うしプライベートでも使う。
家事按分が必要
このような仕事と生活が一緒になっているようなものは家事按分が必要となります。
家事按分とは、何割と決めて経費にすることをいいます。
家賃は仕事と住居で使っているから3割を経費にする。
車は7割を経費にする。
パソコンは5割を経費にする。
このように「何割かを経費にすること」が必要となるのです。
これが家事按分です。
仕事と生活費が一緒になっているものは100%は経費にできません。
何割を経費にすればいいのか
ここで問題となるのが何割を経費にしていいのか?です。
これはケースバイケースなので「絶対にこれ!」という基準はありません。
自分でどれくらい仕事で使っているかを考えて何割にするかを決めなければいけません。
大切なのは、税務署に合理的に説明できるようにすることです。
家賃をなぜ3分の1にしたのか。
なぜスマホ代を8割にしたのか。
なぜ車の5割を経費にしたのか。
なぜ何割にしたのか、は必ず税務調査で聞かれます。
その際にちゃんと説明できるようにしておくこくが大切です。
例えば、
- 部屋が3つあって1つを仕事部屋にしているから3分の1にした。
- 1週間のうち5日は仕事で2日はプライベートだから7分の5にした。
- 走行距離を計測して仕事用の分だけ計算した。
このようにどうやって決めたのかを説明できるようにしておくことが必要なのです。
何となく8割くらいで・・・という説明では税務署は納得してくれません。
合理的な説明が必要となります。
極端に低い場合は何も言われず認めてくれることもあります。
家賃の1%だけとか。(実際にいました)
税務署が何もいってこないのは損している場合もあります。
参考→ 税務調査で何も指摘されないのは税金を多く払っているからかも
完全に事業用に分けていればOK
例えば、
・仕事用に事務所や倉庫を借りている。
・車やスマホが2台あって仕事用とプライベートに分けている。
など、仕事用と生活費が完全に分かれているなら仕事用のものは100%経費にすることが可能です。
車が2台あって1台は完全に仕事用、もう1台はたまに使うという場合は1台は100%、もう1台は30%などとして経費にすることもできます。
領収書が無い場合は
経費にするためには領収書の保管が必要です。
ただ、領収書がなくても経費にできる場合があります。
(絶対大丈夫というわけではありませんので保管するようにしましょう)
例えば、自動販売機でお客様用のお茶を買った場合。
自動販売機は領収書がありませんが経費にすることができます。
この場合はメモ書きをしておけば大丈夫。
【5月1日 自販機 150円 お茶代】
このようにメモしておけば領収書のかわりとなります。
紛失してしまった場合なども同じです。
領収書がないからといってまったく経費にできないというわけではありません。
こちらを参考にしてみてください。
→ 領収書がなくても経費にする方法。紛失しても経費にできる場合がある
金額はいくらまでなら大丈夫なのか?
よく質問されるのが「どれくらいの金額までなら経費にしていいのか?」です。
これは難しいのですが、実際にかかっているのであればいくらであっても大丈夫です。
売上が1,000万円で実際にかかった経費が900万円あるなら900万円を経費にしても問題ありません。
ちゃんと請求書や領収書を保存しておけば大丈夫です。
「いくらまで」の基準はない
実際は300万円しかかかっていないのに500万円あったことにするのは脱税なので絶対ダメです。
でも、実際にかかっているのであればいくらであっても問題はありません。
事業をやっていれば経費が多くて赤字になることだってありえるわけですから。
この業種だったら経費はこの金額まで、という基準はありません。
一般的な基準はある
とはいっても、税務署のなかでは基準を考えています。
税務署が注意してみているのは利益の金額です。
税務署は色々な業種の確定申告データがあるので、この業種ならだいたいこれくらいの利益という基準を調べることができます。
例えばSE(システムエンジニア)ですとほとんど経費がかからないことを知っているわけです。
内装業、小売業がどれくらいの利益がでるのかも知っています。
その一般的な基準と比べて経費が多いと税務調査に入られることもあります。
あとは、その利益の金額で生活できるのかどうかも見ています。
利益が100万円しかないのに東京で家族4人で生活できるのか、などを確認しています。
実際にかかっているのなら問題ない
繰り返しになりますが、実際にかかっているのでしたら経費がいくらであっても問題ありません。
税務調査がきても領収書を見せて「実際にこれだけ経費がかかっているのです」と説明できれば何の問題もないのです。
税務署に目を付けられるからいくらまでにしておこう、と考える必要はありません。
ただ、しつこいですが「実際にかかっていれば」の話です。
税金を減らしたいから生活費を経費にしたり、無いものを入れたりするのはダメですよ!
経費にできないもの
ここまで経費になるものを中心に書いてきましたが、逆に経費にできないものをあげてみます。
- 生活費
- 家族に支払った給料(別生計は大丈夫)
- 10万円以上のモノ(備品や車など)
- 借入金の返済(利息は経費)
- 敷金や保証金などいずれ戻ってくるもの
- 生命保険など(所得控除になる)
- 健康保険料や国民年金(所得控除になる)
- 所得税、住民税(消費税・事業税は経費)
こんなところです。
まず、生活費はもちろん経費になりません。
家族に給料を支払った場合
家族に支払った給料も基本的には経費にできません。
ただ、別生計であれば大丈夫です。
別々に住んでいて生活費などが別であれば給料を払っても経費にできます。
一緒に住んでいると生活費が同じとみなされるのでダメです。
(二世帯などはっきり分かれていれば大丈夫)
なので、奥さんなどに給料を払っても原則は経費にできないのです。
経費にするためには青色申告にして専従者給与とすれば大丈夫です。
10万円以上のモノ
10万円以上のモノは一括で経費にできません。
あくまで一括ではダメなだけであって分割で経費にはなります。
減価償却というもので少しずつ経費にするイメージです。
青色申告ですと30万円未満のモノなら一括で経費にできます。
(青色申告の特典です)
利益がでてるから節税のために金額が大きなモノを買っても一括で経費できないこともあるので注意が必要です。
借入金の返済は経費にならない
借入金の返済は借りたものを返しただけなので経費になりません。
逆を考えると、借りたとき(お金が入金されたとき)は収入になりませんよね。
なので返済したときも経費にはできないのです。
利息部分は経費にすることができますよ。
元金と利息を一緒に支払っているなら利息部分だけを抜き出して経費にすることはできます。
敷金など戻ってくるもの
敷金や保証金などいずれ戻ってくるものも経費にはなりません。
ただ預けているだけとなるからです。
逆に戻ってきたときも収入にはなりません。
生命保険・健康保険・国民年金
これらは経費ではなく所得控除となります。
税金が減ることは同じですが扱いが違っています。
所得税や住民税
所得税と住民税は経費になりません。
税金の支払いは基本的に経費にはならないのです。
例外として、消費税・事業税・固定資産税・自動車税などは経費になります。
まとめ
経費についてまとめますと
- 売上を得るためのものなら経費にできる
- 生活費と一緒になっているものは按分する
- 領収書がなくても経費にできる場合がある
- いくらまでならOKという基準はない
ということです。
仕事で使っていて、領収書があって、ちゃんと説明できれば大丈夫です!
参考までに国税庁ホームページの「やさしい必要経費の知識」も読んでみてください。
最後に
お困りの際はご相談ください。
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