税務調査の実際の流れや聞かれたこと。税務調査専門の税理士が体験したこと
税務調査で実際に聞かれたことをまとめました。
実際の税務調査官の言葉を書いています。
税務調査の参考になれば嬉しいです!
事前準備の重要性も書いています。 税務調査って嫌な響きですよね。
仕事柄、慣れている私でも嫌な感じがします。 そんな税務調査ってどういう流れになるのでしょうか?
実際に税務調査で聞かれたことをまとめてみました。
※今回は法人の税務調査で聞かれたことです。
税務調査とはなにか?
税金の申告は基本的に自分たちで計算して納税することになります。 その税金の計算があっているのかどうかをチェックするために税務署の人がきて帳簿や領収書などを見ます。 税務調査の目的はあくまで「指導」です。 申告の内容が間違っていたら正しい計算方法を指導する、ということです。 なので、仮に税金の申告が間違っていたとしても正しいものに直せばいいだけなので、税務調査を過度に恐れる必要はないのです。
税務調査の心配ごと
税務調査で逮捕されることはない!
税務調査で逮捕されるかも、と恐れる人もいますがまずありませんよ。 大企業などでよほど悪質なものでない限り逮捕されることはないです。
ガサ入れもない!
テレビなどで家中をガサ入れされるシーンがありますが、あんなことはされません! 勝手に引き出しを開けたり畳をひっくり返したりなんてされませんので安心してください。
怒鳴ることも少ない
最近の税務調査では怒鳴ったりすることも少ないです。 今は対応もきっちりしていることが多いので横柄な態度をとる調査官はいません。 必要以上に心配することはありません。
税務調査=不正ではない
税務調査に来るからといって悪質な脱税をしていると判断されるわけではありません。 あくまで調べに来るのが目的です。あらかじめ情報を掴んでいるケースもありますが、ほとんどは何も情報がない状態できます。 税務調査に来るからといって不正が確定したわけではありません。税務調査に来ても何も問題がなかった、というケースも実際にあります。
絶対に税金を取られる?
税務調査に来たら多額の税金を取られると思っている方もいますがそうとも限りません。 先述したように何も問題がないケースもあります。税務調査に来たからといって絶対に税金を取られるわけではありません。ちょっとした間違いなどであれば「次から気をつけてください」と言われて終わることが多いです。
税務調査では絶対に反面調査される?
反面調査は取引先に迷惑をかけてしまうので嫌だと思う方が多いです。 確かにイメージがいいものではありませんよね。反面調査は必ずあるわけではありません。帳簿を見て問題がなければ反面調査されることはありません。 注意点は、反面調査があったからといって不正が確定というわけではないこと。 先ほども書いたように税務調査があるからといって不正があるとはならないのです。あくまで調べるために行われるものですので過度な心配をする必要はありません。
税務調査は赤字でもある
税務調査の目的は、税金の申告が正しいかどうかを調べるためです。 そのため、赤字であっても税務調査はあります! 計算が間違っていて本当は黒字の可能性もある。 あと、消費税は赤字であっても納税が発生することがあります。 その消費税の調査だってあり得ます。 個人事業で税務調査が多い業種についても書きました。 参考→ 個人事業で税務調査が入りやすい業種。無申告や税理士がいない場合は?
来る時期によって違う?
一番多いのは秋です。 9月から12月頃がピークで年明けになると確定申告の関係で件数は減ります。 法人の場合は確定申告シーズンも関係なく調査があります。 確定申告が終わった4月から5月くらいにも税務調査はあります。 ただ、税務署は7月に人事異動があるので6月までに調査を終わらせる必要があります。 一般的にですが4月や5月頃に来る調査は比較的早めに終わることが多いです。
税務調査はまずは日程調整から
税務調査はいきなり来るわけではありません。 通常は事前に連絡があります。 今回は12月中旬くらいに連絡があり、1月に税務調査に行きたいとのことでした。 税務署側からこの日、という指定がありますが必ずその日でないといけない訳ではありません。 都合が悪ければ変更できます。 今回も税務署から指定された日は社長の都合が悪かったので変更してもらいました。 変更したからといって何か不利になるようなことはありません。 あくまで事業優先でいいのです。 参考→ 税務調査の基本まとめ
税務調査の必要資料の事前準備
日程の調整をしたら必要な資料を準備します。 具体的には、
- 申告書
- 総勘定元帳
- 通帳
- 給与関係書類
- 請求書
- 領収書
- 契約書
- 議事録 など です。
直前ではなくなるべく早めに用意して不備がないか確認します。 事前の準備は非常に重要です! 事前に準備することで余計な罰金を減らすことも可能です。 請求書がちゃんとそろっているか、議事録は全部あるか、通帳は繰越前のものがあるか、などチェックします。 参考→ 税務調査で用意すべき書類など 契約書の印紙がちゃんと貼ってあるかなども確認しましょう。 万が一、税務調査のまえに間違いを見つけたら税務署から指摘される前に自ら修正をすることで余計な罰金を減らすことができます。 税務署の人は税務調査のプロですから、間違いを見逃す可能性はかなり低い。見つからないだろうと思うのは危険です。 もし、間違いを見つけたら税務調査の前に修正をしましょう。 無申告であっても税務調査はあります。 その場合も税務調査の前に自分から申告書を提出することで加算税が変わってきます。 税務署から指摘される前に自分から修正申告をすることがトータルとして負担を減らすことになります。
税務調査の流れ
税務調査はたいてい10時から始まります。 10時に税務署がきますので社長はその前には準備しておきましょう。 今回の調査は2日間でした。 初日は、午前中は雑談と会社の状況確認。午後から帳簿調査開始。 2日目は、午前中から帳簿調査、夕方に報告。 という流れでした。 詳細は後述します。 個人事業主の方はこちら→ 個人事業の税務調査立会いで聞かれたこと
代表者はずっといなくてもいい
税務調査には代表者の立ち会いが必要ですが、最初から最後までずっといないといけないわけではありません。 初日の午前中に会社の概況などを聞かれますので、そのときは代表者が答える必要がありますが帳簿などを確認し始めたら代表者の立ち会いは必要ありません。 帳簿のことや会計処理のことなど細かいことは税理士が対応します。 どうしても社長に確認するものがあったら、「後日確認して返答します」で大丈夫なのです。
税務署から質問されたことのすべて
税務調査では何を聞かれるのか不安に感じている人も多いでしょう。 今回の調査で税務署が発言したことのすべてを記載します。 社長や私が話していることは割愛します。 話の流れがわかりずらいかもしれませんが、どのようなことを聞かれるのかは参考になると思います。 今回調査に来たのは、28歳の男性、事務官でした。事務官というのは肩書きのない職員のことです。 今どきの若者という感じで細身のスーツを着ていました。どこかはわかりませんが有名なブランドものだと思います。 ワイシャツも真っ白なものではなく、少し柄がついているものでオシャレな感じです。 以下、調査当日のやりとりです。 10時 税務署が来る、名刺交換 「社長は横浜に住んでいるのですか?」 「私は以前は横浜の税務署にいたんですよ」 「はじめの頃は○○を売っていたんですか?」 「今はどんな事業をやってるんですか」 「最近は売上げがすごくあがっていますがどうしてですか」 「ネットをみたんですけど、あの写真は何ですか」 「あの場所で撮っていた写真も事業に関係あるんですか」 「TVでイベントを紹介されていたこともありますよね」 「同業者はいるんですか」 「最近、私も○○を飼いたいと思ってるんですけど何がいいですか」 「え!そんな事業もやっているんですか」 ここまでで10時30分。 時計はまったく見ていませんでしたが、ちょうど30分間でした。 笑顔で雑談という感じでした。まったくメモをとっていません。ずっと社長の目をみて話していました。 ここからメモを取り出し、真剣な顔になります。 「設立のきっかけは」 「設立前は何をやっていたんですか」 「設立から現在までの流れは」 「今も養殖ってあるんですか」 「東銀座に○○○のお店がありますよね」 「新宿にも店舗ありますね」 「一番気になるのが、今年も去年と同じくらいの年商になるのかどうか」 「ものすごく売上があがってますけど理由はなんですか」 「イベントの入場料はいくらですか」 「入場者数は」 「年に何回開催するんですか」 「日本全国でやるんですか」 「すると、入場者が○○人で入場料が○○円だとこれくらいの売上ですね」 「決算書の売上は○億円ですが、それ以外の売上は何ですか」 「お酒もだしているんですか」 「バーですか」 「現金の管理はどうしてるんですか」 「お金のやりとりはどうしてるんですか」 「利益は半分ですか」 「ネットを見たのですが、車の事業もやってるんですか」 「クラシックカーですか」 「ビジネスとしてどうやって収入を得るのですか」 「大きなビジネスになるのですか」 「出身は東京なんですか」 ここまでで11時20分。 社長がかなり話していたので時間が経っています。 ここからは少し気が緩んだ感じです。 「社長はそれ以外にやっている事業はあるんですか」 「車は趣味ですか」 「先方から声をかけられたんですか」 「休日はあるんですか」 「仕事楽しそうですね」 「イベントでは飲食もあるんですか」 「売上はすべて管理しているのですか」 「管理業者にお願いすることもあるのですか」 「業者の出店料は?」 「売上は飲食と物販だけですか」 「イベントの時期はいつですか」 「社長もイベントに参加しているんですか」 「従業員でも管理できる人はいるんですか」 「従業員は何人ですか」 「経理はいないのですか」 「デザイナー報酬はどうしてるんですか」 「オーダーするのですか」 「デザインしたデザイン集のようなものはありますか」 「何個くらいデザインしたのですか」 「今年のイベントはいつですか」 ここまで会社の状況の確認です。 11時40分になっています。 「税務的な質問をいいですか」 「平成26年に不動産を購入していますが、理由は」 「まだ造作していないのですか」 「納税地とは違う場所にも賃貸されてますよね」 「いくつか賃貸物件がありますが用途は」 「社宅の人もいるのですか」 「誰ですか」 「新潟県に倉庫がありますがなぜですか」 「○○は会社で借りているんですよね」 「購入した不動産はいくらですか、ローンですか、築何年ですか」 「社長への貸付金がありますが契約書はありますか」 「貸付けの理由は」 「車がたくさんありますが、ナンバーがわかるものはありますか」 ここで11時55分。 「午後から帳簿を見させてください」 「人件費の明細を用意してください」 「貸倒損失がありますがその書類を用意してください」 「現金での決済はありませんか」 「先生(私)の方で記帳をされているのですか」 「会計ソフトは共有しているのですか」 「事務所と会社のソフトは同じですか」 「金額の大きなものの原始資料は確認していますか」 ここで12時になりました。 このあとは午後から帳簿調査開始です。 午前中のやり取りは会社の状況確認でした。 会計ソフトは会社と事務所で同じか、という質問は同じソフトなら私がデータをもっているはずなので紙の元帳ではなくデータで検索することも可能かどうかを知りたかったのでしょう。 残念ながらデータはありませんでした。 よく調べてきているな、という印象でした。 ホームページを見ていますし、TVで紹介されたことも知っていました。 車を数台もっているのですがそのうちの一部は事前にナンバーを把握していました。
税務署がコピーして持っていったもの
税務調査では、請求書や元帳などをコピーしてもって帰ることがあります。 今回コピーしたものはこちらです。 ・総勘定元帳(売上・仕入・役員報酬・給与・地代家賃など) ・売上の請求書 (金額が大きいもの) ・仕入の請求書 (金額が大きいもの) ・車の購入明細 ・通帳のコピー (一部) ・契約書 (一部) ・源泉徴収簿 おもに総勘定元帳です。 3期分の売上、仕入をすべてもっていきました。
コピーや資料を探すのは税務署の仕事
上述のように税務調査ではコピーをとっていきます。 そのコピーですが、今回は私の方でとりました。 調査は応接間だったのですがコピー機がオフィスにあったからです。 オフィスに入られて余計なモノまで見られるのが嫌だったからです。 本来はコピーや資料を探すのは税務署がやるべきです。 それが仕事ですからね。 もしお願いされたら丁寧に断ってかまいません。 こちらも仕事の時間を割いて調査に協力しているわけですからね。 たまにコピー代として1枚10円くらいで計算して払ってくるときがあります。 遠慮せず貰いましょう。
税務調査は2日間で終わりではない
税務署がきて帳簿を見るのは2日間だけでした。 ただこれで終わりではありません。 税務調査では、いろいろ質問されますがその場ですべてが解決するわけではありません。 何年も前のことなので忘れていたり記憶があいまいなこともあります。 そのような場合には、「調べて後で連絡します」と伝えます。 税務署側でも調べてほしいことの一覧を作成します。 「調べてほしいことをまとめたので調べて連絡ください」と言われます。 時間が限られているのでこのような形になるのです。 税務署がくるのは2日間だけですがその後も調べることなどもあるので終わるまでは長い期間がかかるのです。 聞かれたことにこちらが回答しても、そのことを税務署側も税務上問題ないのか?を検討しているので税務調査が終わるまでにはかなりの長期間となる場合もあります。長いもので半年くらいかかったことも。 このやりとりをすべて自分で行うのは大変です。 正直なところ、税務調査の当日は思っているよりヒマです。何しろ調査官は帳簿を必死に見ているわけですから立ち会いをしていても特にやることがありません。 たまに質問されることに答えるだけです。 税務調査で本当に大変なのは、調査後のやりとり。 税務調査に来て色々な資料を持って帰り、それを上司に相談してじっくり調べます。あとから「あの契約書の内容は?」「これは何の支払い?」などなど何度もやりとりすることになります。 ここのやりとりで、追徴税額が変わってくることもあります。 多少費用が掛かっても税理士にお願いした方がいいのはこのような理由があるからです。 参考→ 税理士に立ち会いをお願いすべき2つの理由
税務署は事前に調べてくる
上記の税務署の発言をみていただくとわかりますが、事前にいろいろと調べてきています。 申告書をみていますから、売上や利益の推移はわかっています。 ホームページも見てきています。 ホームページの写真のことまで聞いてきました。 社長は車が好きで何台か所有していますが、何を所有しているのかも調べていました。個人で買った不動産のことも知っていました。 個人の不動産は申告書には書いてないし、まだ確定申告もしていません。 それなのに知っているのです。(法務局で調べているのでしょう) 下手に隠さず正直に答えた方がいいです。
まとめ
今回は宿題が7つくらい出されました。調べて後日連絡することになっています。 このように税務調査はその場で終わることはまずありません。 税務署から指摘された事項について調べて回答することになります。 気をつけていただきたいのは、税務署も人間だということです。 必要以上に敵対心をもったり冷たくあしらう必要はありません。 資料を探したりするのは税務署の仕事ですから、こちらが積極的に手伝う必要はありません。 ただ税務調査を早く終わらせるためにもできることは協力するようにしましょう。 税務調査はあくまで「指導」です。怖がる必要はありませんよ。 税務調査は一人で対応するのはすごく大変です。 何より時間がものすごく取られます。税務署が来るときだけではありません。 税務署が帰った後もやることがあるのです。税務署の言いなりになってしまってもいけません。 本当に事業で使っている経費なのに、税務署から言われたから経費から抜いた、なんて話もあります。 税務署とのやり取りも大変ですから、税務調査の連絡があったら税理士に依頼しましょう!
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