個人事業主が税務調査で指摘される「支払調書で申告している場合」の間違いで多いもの
個人事業主は職種によって支払調書をもらう場合もあります。
その数字をそのまま申告していればいいわけではありません。 税務調査で指摘される支払調書に関する間違いをまとめてみました。
大切なのは、支払調書も間違えていることがある・支払調書がないものも申告が必要です。
この記事の内容について簡単にお話ししました。
個人事業者の税務調査は支払調書も確認する
税務調査では支払調書も確認されます。
一定の要件を満たす支払調書は税務署に提出されていますので当然ながら税務署側も確認しています。
税務調査に来る前に、どこから・いくらくらいの収入があるかをわかっているケースが多いです。
支払調書は税務署にとっては情報収集のために非常に重要なものなのです。
税務調査で指摘されることで多い事項
その支払調書に関して税務署で実際に指摘された事項をまとめてみます。
- 支払調書があるものだけを売上として計算していた
- 支払調書の金額そのものが間違えていた
- 消費税込みと消費税抜きを間違えていた
一つずつ見ていきます。
支払調書があるものだけ申告していた
毎年、1月頃に取引先から支払調書が送られてくる。 なのでその支払調書の金額だけを申告していた。
このようなケースが非常に多いです。 取引先が4社あってうち3社から支払調書がくるので3社だけの売上を申告しているケースが多いです。 確定申告は支払調書の有無にかかわらず売上はすべて計算しなければいけません。
支払調書がなかったとしてもすべて計算しなければいけないのです。 もし、支払調書がないものを申告していないと「売上もれ」となってしまいます。
故意に売上げを抜いたと思われる
取引先が4社あるのに3社だけ申告していると最悪の場合は故意に売上を抜いたと判断されかねません。
自分でどの取引先に売上があるか、はわかっているはずです。
何十社もあるなら抜けてしまうこともあるかもしれませんが、数社であればわかるはですよね。
取引先が4社あるのに支払調書が3社しかないから3社だけ申告したら1社抜けているのは明らかにすぐわかるはずです。
支払調書がなくても売上があったことはわかっているはずです。 支払調書があるものだけ申告すればいいわけではありません。
税務署がよく言ってくるのは「仮に支払調書が1枚もなかったら売上は0になるんですか?」ということ
支払調書が送られてくるのは義務でははい
勘違いされている方も多いのですが、支払調書を送るのは義務ではありません。
会社側は支払調書を作成して税務署に提出する義務はありますが、本人に渡す義務はないのです。
今まで渡されていたのは過去の慣習だったり確定申告しやすいようにということで渡していただけです。 なので、支払調書が来る・来ないは確定申告には関係ないのです。
支払調書が1枚も渡されなくても確定申告は必要なのです。
自分で集計しなければいけない
支払調書を本人に渡す義務はないので、今はもらっていても今後はもらえなくなる可能性もあるわけです。
本来、売上は自分で集計するものです。 支払調書があったとしても自分で集計するようにしましょう! 帳簿の作成も必要です。
支払調書の金額が間違えている
これもよくあります。 支払調書は支払い側が作成するものですが、その金額が間違えていることがあるのです。
正確に言いますと集計する期間が間違えていることが多いのです。
1月分から12月分までの12か月を集計する必要があるのですが、 1月分の仕事から12月分までの仕事の12か月分が必要です。
入金ベースでいうと2月末入金から翌年1月末入金の12か月になるケースもあるわけです。 締日と入金日によっては、3月末入金から翌年2月末入金までの12か月になることもありえます。
入金ベースで作成する間違い
よくある間違いが、1月末入金から12月入金までの12か月を集計しているケース。 12か月分なのは同じなのですが、1か月ずれてしまっているんですね。
月末締の翌末支払いで考えると、1月分の仕事は2月末に入金されます。 この場合は、2月末入金から翌年1月末入金の12か月分を集計する必要があるのです。
支払調書の金額が合っているかは確認しなければいけません。
消費税込みと消費税抜き
う一つ多い間違いが、消費税込みなのか消費税抜きなのか。
支払調書に書いてある金額が消費税込みか抜きなのかは注意が必要です。 個人事業主の場合は通常は税込み金額で売上や経費を集計します。
100万円の売上があった場合には110万円として売上に書く必要があります。 たまに支払調書が消費税抜きの100万円と書いてあることがあります。
支払調書を信じてそのまま100万円を売上とすると間違えてしまいます。
支払調書に頼らないことが大切
毎年、支払調書の金額をそのまま確定申告している方は今後は注意するようにしましょう!
仮に支払調書の金額通りに申告していたとしても、その支払調書が間違えている可能性もあります。 支払調書が間違えていたとしても悪いのは作成した相手ではなく自分です。
追加の税金が発生しても支払調書を作成した側は負担してくれません。
大切なのは、
- 支払調書の金額は必ず確認する。
- 支払調書がない売上がもれていないか
この2つは必ず確認するようにしましょう!
先述したように、仮に支払調書が間違えていたとしても追加の税金を負担するのは自分です。
税務調査で指摘された場合は罰金もかかってしまいます。
参考→ 過少申告・無申告・重加算税が改正。余計な罰金を増やさないためにやるべきこと
支払調書の金額が違っていたら
自分で調べてみて支払調書の金額が違っていたら相手側にその旨を伝えてみましょう。
修正してもらえるならお願いした方がいいです。
確定申告については支払調書の金額にかかわらず自分で集計した正しい金額で申告します。
支払調書は300万円だけど自分で計算したら310万円であれば310万円で申告します。
支払調書と違っていても問題はありません。
税務署側も支払調書の金額が違っているケースがあることはわかっていますので大丈夫です。 ただどのように計算したかの根拠は残す必要があります。
帳簿は必要
支払調書の金額が合っていたとしても帳簿は必要です。
個人事業主の場合は白色申告であっても帳簿が必要です。
支払調書の有無、間違っているかどうかに関係なく帳簿は必要ですので注意しましょう。
無申告になってしまうくらいならそのまま申告する
どうしても自分で計算するのが難しいなら、素直に支払調書の金額をそのまま申告するようにしましょう。
これまで書いてきた通り支払調書も絶対正しいわけではありません。 間違えていることもあります。
それでも、自分で集計できないのであれば支払調書の金額をそのまま申告しておいた方が税務調査のときに説明しやすいです。 「自分でやらなきゃ」と思ったけど実際やろうとすると大変で無申告のままになってしまうのであれば、まだ支払調書の金額をそのまま申告した方がいいです。
支払調書は間違えていることもあるのですが、自分で作成したのではなく相手側が作成したものです。
一定の信頼性はありますので「そのまま申告した」と伝えた方が税務調査のときにも説明しやすいです。
支払調書がないものは自分で
ただ、支払調書がないものについては自分で計算しなければいけません。
支払調書がなくても申告が必要であることは覚えておきましょう!
まとめ
支払調書の通り申告していても間違えていることもあります。 支払調書が絶対に正しいというわけではありません。
自分で集計することが必要なのです。
ただ無申告になってしまうくらいなら支払調書の金額で申告をした方がいいです。
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