自宅サロン(兼事務所)の税務調査の注意点。自宅と仕事部分を明確に区分することが重要
自宅サロン(事務所)の税務調査の注意点を書いてみます。
自宅兼事務所の場合は家計費の按分が問題となります。
家賃、光熱費、通信費などに注意が必要です。 仕事部分と自宅部分を明確に区分することが重要となります。
自宅サロン(事務所)の税務調査の注意点
個人事業者の場合は自宅を仕事場としていることも多いです。
自宅とは別に事務所や店舗を借りるのは負担が大きいですから、仕事上問題がなければ自宅を使用していることも多いです。
自宅を事務所や店舗として使用している場合の税務調査の注意点を挙げてみます。
- 税務調査の場所は自宅(兼事務所)となる
- 家賃、住宅ローンが経費となるか
- 光熱費や通信費の取り扱い
- 内装の改装費などが経費になるか
このような問題があります。
賃貸の場合は必ず賃貸借契約書を用意するようにしましょう。
税務調査の場所は自宅か事業所
自宅兼事務所に限らず個人事業者の場合には自宅(事務所)で税務調査を行うケースが多いです。
税務調査の調査官が現状を把握したい、資料が揃っていることが理由です。
自宅兼事務所のように自宅で仕事をしているような場合には、
- 自宅でどのような仕事をしているのか
- 仕事としてどの程度しようしているのか
を確認する必要があるからです。
後述しますが、仕事として使用している割合を示すと同時に実際に調査官に現場を見てもらうことも重要です。
実際に見せれば仕事をしていること、経費になることを納得してもらいやすいです。
自宅がどうしても難しい場合には税務署で調査を受けることも可能ではあります。
実際にあったケースでは、
- 子供に障害があり知らない人が来ると暴力的になってしまう可能性がある
- 介護が必要な親がいてどうしてもスペースが取れない
などの理由で税務署の会議室で調査を受けたこともあります。
ただ、先ほど書いたように自宅兼事務所の場合には自宅部分を経費にできるかどうかが非常に重要です。
調査官が納得しやすいように実際に自宅兼事務所を確認してもらうことが重要でもあります。
調査官は自分で見たことを上司に報告しますので、現場を見てもらった方が上司の理解を得やすいでしょう。
調査官に過度に協力する必要はないのですが、経費にするためには現場を確認してもらった方が理解を得やすいです。
自宅などの場合には、事業として使用している部分を明らかに区分できる場合にのみ経費にできる、とされています。
ハッキリ区分できないと判断されると経費にできませんから、できるだけ現場を見てもらうことで認められるようにした方が良いでしょう。
参考 → 領収書やレシートなど何も資料が残っていない場合の税務調査対策
家賃の取り扱い
賃貸で家賃を支払っている場合には経費になるかどうかの問題があります。
自宅がサロン、店舗のように明らかに住居とは違うスペースとなっている場合は経費になるのは間違いありません。
問題となるのは生活と一緒になっている場合の経費になる割合です。
契約書などで店舗部分と住居部分がハッキリと記載されていればそれを元に算定できるのですが、ハッキリ書かれていないケースの方が多いです。
ハッキリと書かれていない場合には自分でどれくらいが経費の割合なのかを計算しなければいけません。
計算する方法としては、
- 面積の割合
- 使用時間の割合
などがあります。
面積の割合で計算
仕事部分と住居部分の面積の割合を計算する方法をとることが多いです。 全体の面積は契約書などからわかります。
仕事部分の正確な面積を算出するのは難しいのですが、おおよその割合で算出してしまうこともあります。
面積で算出してみると、意外と経費にできる割合が少なくて驚かれることがあります。
理由としては、廊下・お風呂・トイレ・台所なども含めた面積を元に計算するからです。
廊下やお風呂なども含めた全体面積のうちに仕事で使用している面積がどれくらいかを計算するため、どうしても感覚よりも経費にできる割合が低く感じてしまいます。
3部屋のうち1部屋を仕事にしているから3分の1くらいかな、、と思っていても実際に計算すると5分の1くらいだったりすることもあります。
参考 → 税務調査で生活費の金額を聞かれる理由
時間で計算
ケースとしては少ないですが、仕事で使用している時間の割合で算定することもあります。
1日のうちにどれくらい仕事として自宅を使っているか、を元に計算します。
24時間のうちに仕事で使用しているのが8時間であれば3分の1ということになります。
ただ、時間で計算する場合には本当にその時間仕事しているのか、がわかりにくいためあまり使用されません。
基本的には面積で算定することになります。
仕事で使っていることを証明する
サロン、店舗など仕事として使っていることが明らかである場合には経費となります。
いくらを経費にするのかは上述したように割合を計算しなければいけませんが、経費になることは間違いありません。 注意しなければいけないのは、見ただけでは仕事として使用しているのかわからないケースです。
「事務所として使用している」と主張してもそれが本当なのかどうかわからない場合には経費として認めてもらえない可能性もあります。
どんな仕事をやっているのか、を明確に示すことができなければ経費として認めてもらうことが難しくなります。
建設業で普段は外で仕事している人が事務作業をやっている程度ではほとんど認められません。
逆にSEや事務職など主に自宅で仕事をしているなら経費として認められる可能性が高いです。
何れにしても自宅の場合は「仕事で使用している」ことをハッキリと示せないと経費として認められない可能性があるので注意が必要です。
参考 → 調査は疑ってくるので事実を主張すべき
持ち家(住宅ローン)の場合
賃貸ではなく購入した場合には家賃として経費にはできません。
経費にできる可能性があるとすれば、住宅ローンの利息部分です。 一年間に支払った利息については上述した家賃と同じように仕事として使用している割合を計算しなければいけません。
経費にできるとはいえ、利息分だけ、しかも仕事として使用している割合だけとなりますので金額としてはそれほどインパクトはないでしょう。
住宅ローン控除に注意
住宅ローン控除を受けている場合には特に注意が必要です。
住宅ローン控除は自宅を住居として使用しているから控除できるものです。
それを、一部を事業用として使用しているとして経費に算入していると住宅ローン控除が受けられなくなってしまう可能性があります。
通常は住宅ローン控除を受けた方が税負担が減ります。 住宅ローン控除は自宅を住居として使用しているから控除できることに注意しましょう。
事務所として仕事に使用していると住宅ローン控除を受けられなくなってしまうことがあります。
(一定割合までは認められることも)
税務調査でもこの点を指摘されることがあります。
確定申告で住宅ローン控除を受けていながら税務調査で自宅を事業として使っているから住宅ローン控除を認めない、と言われてしまうと負担は大きいです。
詳細は省きますが、住宅ローン残高の1パーセントを控除できるとすると3,000万円の残高だと30万円です。
それが3年、5年となると大きな負担です。
事業として経費を入れていて上記のように住宅ローンがダメだと言われると事業として使っていないことにして・・・と言われることもあるのですがあくまで実態で判断するのが原則です。
実際の税務調査では調査官との話し合いをして、といったこともよくあります。
通信費・光熱費など
通信費や光熱費も事業として使用している割合を算定することとなります。
自宅の通信費について事業割合を算定する際には100パーセントを経費としていなければ税務調査で細かく指摘される可能性は低いです。
もちろん経費に入れた割合の根拠は聞かれます。 5割を経費にしていればなぜ5割が経費なのかを問われますが、そこまで突っ込んでの話となることは少ないです。
光熱費については、ガス代や水道代は否認(ダメ)されることが多いです。 仕事でガスを使うケースは少ないので経費としては認められないのです。
お茶を飲むために、というくらいではダメです。
電気代については家賃と同じ考えで経費にすることも可能です。
参考 → 税務調査の流れ
内装など改装費用
サロン、店舗などのために改装した場合には経費にすることができます。 金額によっては減価償却として経費になります。 (減価償却の説明は長くなるので省略します)
改装費用も明らかに事業として使う部分であると判断できれば経費にするのは問題ありません。
自宅部分も一緒に改装したような場合には上述した家賃と同じように事業として使っている部分の金額を算定しなければいけません。 算定した根拠は必ず提示できるようにしておくことが重要です。
当然ながら改装費用の請求書や見積書なども保存しておく必要があります。
まとめ
自宅兼事務所のような場合にはとにかく自宅と仕事の割合をハッキリ示せるようにしておくことが非常に重要となります。
経費になるかどうかにより税金の負担が大きく違ってきます。
冒頭にも書きましたように、事業として使用している部分を明らかに区分できる場合にのみ経費にできる、とされていますからここを一番気をつけなければいけません。
仕事に使っているということをハッキリと示すようにしましょう。
自宅を事務所やサロンとしている方の税務調査のご相談をお受けしてきました。
お困りの際はご相談ください。
心配な場合はご相談ください。
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